IT転職の試用期間中も、給与や雇用条件は原則として入社時に合意した内容が適用されます。試用期間だからといって、会社が一方的に給与を下げたり、正社員としての契約を自由に取り消したりできるわけではありません。
ただし、求人票や雇用契約書に「試用期間中は月給が異なる」「試用期間終了後に固定残業代を付ける」などの条件が明記されている場合は、その内容が判断の基準になります。
試用期間中の給与はどうなる?
給与は、雇用契約書や労働条件通知書に記載された金額が基本です。試用期間中だけ給与が異なる場合は、期間、金額、手当の扱いなどが分かる形で示されている必要があります。
たとえば、次のような記載がある場合は、試用期間中と本採用後で給与が変わる可能性があります。
- 試用期間3か月は月給28万円、本採用後は月給30万円
- 試用期間中は職務手当を支給しない
- 試用期間中は固定残業代を含まない
- 試用期間終了後に役職手当を適用する
一方、求人票では「月給30万円」とだけ記載され、雇用契約書にも試用期間中の減額が書かれていない場合、試用期間を理由に会社が後から一方的に減額することは問題になります。採用時に示された条件と、実際の契約書の内容が異なる場合は、契約書の記載だけでなく、採用時の説明や求人票も保存して確認してください。
最低賃金を下回る給与にはできない
試用期間中であっても、原則として地域別最低賃金を下回る賃金で働かせることはできません。最低賃金は都道府県や賃金の種類によって異なるため、月給制の場合は勤務時間から時給相当額を計算して確認します。
最低賃金との比較では、通勤手当、家族手当、時間外・休日・深夜勤務の割増賃金など、対象から除外される賃金があります。正確な判定には、給与の内訳と勤務時間を分けて確認する必要があります。最低賃金制度の基本は、最低賃金法で定められています。
試用期間中の雇用条件に違いはある?
試用期間中だけ、担当業務、研修内容、評価方法、手当などが異なることはあります。ただし、どの条件がいつまで異なるのかを、入社前または契約時に確認できることが重要です。
| 確認項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 雇用区分 | 正社員として採用されるのか、試用期間だけ契約社員なのか |
| 試用期間 | 期間、延長の有無、延長できる条件 |
| 給与 | 基本給、固定残業代、各種手当、昇給時期 |
| 勤務時間 | 所定労働時間、残業の扱い、リモート勤務の条件 |
| 休日・休暇 | 休日、年次有給休暇、入社直後の休暇の扱い |
| 社会保険 | 健康保険、厚生年金、雇用保険への加入時期 |
| 本採用の判断 | 評価項目、判断時期、延長や不採用の条件 |
労働契約を結ぶ際、会社は賃金、労働時間、契約期間、退職に関する事項などの労働条件を明示する必要があります。具体的な明示事項は、労働基準法第15条などで定められています。
試用期間中は正社員ではないの?
「試用期間」と書かれているだけで、正社員ではないと決まるわけではありません。多くの企業では、正社員として採用したうえで、入社後の適性や勤務状況を確認する期間として試用期間を設けています。
ただし、次のような契約は別に確認が必要です。
- 試用期間中は有期契約で、本採用時に無期契約へ変更する
- 試用期間終了時に改めて正社員契約を結ぶ
- 雇用契約書に「本採用しない場合がある」と記載されている
- 試用期間中だけ契約社員やアルバイトとして扱う
特に「正社員登用あり」と「正社員として採用」は意味が異なります。前者は、試用期間中の身分が正社員とは限りません。求人票の表現ではなく、雇用契約書や労働条件通知書で雇用区分を確認しましょう。
試用期間中の社会保険や有給休暇はどうなる?
試用期間中でも、加入条件を満たしていれば健康保険、厚生年金、雇用保険の対象になります。試用期間だからという理由だけで、加入を遅らせられるとは限りません。
年次有給休暇は、原則として雇入れの日から6か月継続勤務し、その期間の全労働日の8割以上出勤した場合に発生します。試用期間も継続勤務の期間に含まれるため、「本採用になってから6か月」とは限りません。
ただし、短時間勤務や契約期間などによって社会保険・雇用保険の適用条件が変わることがあります。自分の勤務時間、雇用契約の期間、会社の規模などを前提に確認してください。
試用期間中に解雇や本採用拒否はできる?
試用期間中でも、会社がいつでも自由に解雇できるわけではありません。試用期間は、通常の無期雇用よりも会社の判断に一定の幅が認められることがありますが、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当といえない解雇は認められません。
たとえば、採用時には分からなかった重大な経歴詐称、必要な能力や適性が著しく不足していること、改善を求めても勤務上の問題が続くことなどは、事情によって本採用拒否の理由になり得ます。しかし、単に「社風に合わない」と説明されただけで直ちに適法になるわけではありません。
また、試用期間中の解雇でも、原則として解雇予告または解雇予告手当が必要です。ただし、雇入れ後14日以内など、法律上の例外があります。解雇の通知を受けた場合は、通知日、理由、契約書、会社とのやり取りを保存してください。
IT転職で特に確認したい条件
IT職では、給与の金額だけでなく、固定残業代や配属先の条件によって実際の働き方が変わります。試用期間中と本採用後で違いがあるか、次の項目を確認すると判断しやすくなります。
- 基本給と固定残業代がいくらずつか
- 固定残業時間を超えた場合に追加の割増賃金が支払われるか
- 客先常駐、受託開発、自社開発など配属先の形態
- 試用期間中に研修扱いとなる場合の給与と勤務時間
- リモート勤務やフレックスタイムの適用時期
- 使用する技術、担当工程、配属変更の可能性
- 資格手当、在宅勤務手当、住宅手当などの適用時期
- 試用期間を延長する条件と、延長できる期間
「未経験者は試用期間中に給与が下がる」「研修中は残業代が出ない」といった扱いが常に認められるわけではありません。研修が会社の指揮命令下で行われている勤務であれば、労働時間や賃金の扱いを契約条件と実態の両方から確認する必要があります。
入社前に条件を確認する手順
給与や雇用条件に不明点がある場合は、入社前に書面で確認するのが基本です。
- 求人票、オファーレター、雇用契約書、労働条件通知書を用意する。
- 試用期間中と本採用後の基本給、手当、固定残業代を並べて確認する。
- 雇用区分が「正社員」なのか「契約社員」なのかを確認する。
- 試用期間の長さ、延長条件、本採用の判断基準を確認する。
- 不明な点は、採用担当者に「試用期間中の月給はいくらか」「固定残業代は含まれるか」など具体的に質問する。
- 回答をメールなど記録が残る方法で受け取り、契約書の内容と照らし合わせる。
口頭で「本採用後に上がる」「問題がなければ正社員になる」と説明された場合は、金額や条件、時期を文書で確認してください。書面に反映されていない条件は、後で認識の違いが起きやすくなります。
条件が説明と違ったときの対応
入社後に給与や雇用区分が説明と違う場合は、まず契約書、給与明細、求人票、メール、面接時の案内を整理します。そのうえで、会社に「採用時の説明と現在の条件が異なるため、契約上の扱いを確認したい」と具体的に伝えます。
給与の未払い、最低賃金を下回る可能性、社会保険の加入漏れ、解雇の有効性などが関係する場合は、労働基準監督署や都道府県労働局の相談窓口、弁護士などへの相談を検討してください。契約内容と勤務実態によって判断が変わるため、相談時には関連書類を持参すると状況を説明しやすくなります。
IT転職の試用期間中も、給与や雇用条件は契約書・労働条件通知書に記載された内容が基準です。まずは、試用期間中の給与、雇用区分、社会保険、本採用の条件を本採用後の条件と並べて確認し、説明と書面が違う場合は入社前に会社へ具体的に確認しましょう。







